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    『 コンプライアンスと損得 』

                       
2004/01/26

  関与先からの労働時間管理やサービス残業についての
相談があいかわらず多い。

 解決策として「コンプライアンス(法令遵守)」「企業倫理」といった
面から話をすると、今ひとつ納得できない部分があるようだ。

 企業が法律に違反する行為をしたり、倫理的におかしなことを
するのがいけないのは一般論として理解できるのだが、トヨタ自動車、
中部電力、松坂屋といったいわゆる一流企業でも行われている
サービス残業を自分たちの会社が無くせるのだろうか。

 スピード違反で捕まったようなもので、たまたま運悪く見つかった
だけで、大したことじゃないのではないか、という思いが邪魔をする
ようだ。

 事業場が監督署の定期的な調査にあたる確率はわずか4%程度
しかないから、「運が悪かった」のかもしれないが、不満をもつ従業員が
監督署へ駆け込めば該当率は100%となってしまう。

 それも駆け込んだ従業員ばかりでなく、事業場全体が調査対象と
なる。

 最近は、従業員の家族が監督署へ申告することも多いときく。

 家族の口までふさぐことは不可能だ。

 過去2年分の残業代を一気に支払わなければならないのは、
会社にとって相当きついはずだ。

 従業員の不満を増大させるのはリスクが高いと言える。
 
 脳・心臓疾患で従業員が亡くなった場合は、さらに深刻である。

 毎晩10時過ぎに帰宅する従業員だったとしたら、遺族は間違いなく
労災申請を行い、損害賠償を企業に求めてくるだろう。

 1ヵ月平均80時間の残業をしていれば労災と認定されるのは
確実で、保険料率は上がる。

 損害賠償額は数千万円。中小企業であれば利益はとんでしまう
だろう。

 こう考えると、最初から労働時間の管理を徹底し、毎月適正な
残業代を支払っていく方がトータルコストは低いのではなかろうか。

 損得勘定で、その方が得なのである。

 コンプライアンスの徹底、企業倫理の確立も大切なことであるが、
企業にとって一番重要な利益追求の面からみて、時間管理をしない
ことはマイナス要因となりうる可能性が高く、改善していくべき点で
あると言える。

                              (岩堀)


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