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アフガニスタンからの手紙 |
2001/09/20 |
9月11日の連続テロ事件以来、緊迫した社会情勢が続いて います。 当社にいただいたメールに「アフガニスタンからの手紙」が 転送されていました。 いろいろな考え方、感じ方があるかと思いますが、できるだけ たくさんの方に読んでいただきたい、という手紙だそうなので このホームページに掲載させていただきます。 あえてコメントは控えさせていただきます。 > > 国連難民高等弁務官カンダハール事務所で働いていらした方 > −千田悦子(ちだ・えつこ)さんという方の手記を紹介させて ください。 > > 千田さんは、国連難民高等弁務官カンダハール事務所で 仕事を していましたが、オサマ・ビン・ラディン氏を かくまっているとされる タリバンの本拠地への アメリカの軍事行動などの危険性が出てくる中、 一時的に勤務先をパキスタンに移転するという措置で、 「避難」を していますが、その緊急避難の最中にしたためた 手記です。 > > 以下、千田さんの手記です。 > > *********** > 報道機関の煽る危機感 9月12日(水)の夜11時、カンダハールの国連の ゲストハウスでアフ ガニスタンの人々と同じく眠れない夜を 過ごしている。 私のこの拙文を読んで、一人でも多くの人が アフガニスタンの人々が、(ごく普通の 一人一人の アフガン人達が)、どんなに不安な気持ちで9月11日 (昨日)に起きたアメリカの4件同時の飛行機ハイジャック 襲撃事件を受 け止めているか 少しでも考えていただきたい と思う。 テレビのBBC ニュースを見ていて心底感じるのは 今回の事件の報道の仕方自体が、政治的駆け引きである ということである。 特にBBCやCNNの報道の仕方自体が、根拠のない不安を 世界中にあおっている。 事件の発生直後(世界貿易センターに飛行機が2機 突っ込んだ時点で)BBCは早くも、未確認の情報源より パレスチナのテログループが犯行声明を行ったと、 テレビで発表した。 それ以後 事件の全貌が明らかになるにつれて オサマ.ビン.ラデンのグループの犯行を示唆する報道が 急増する。 その時点でカンダハールにいる我々はアメ リカが いつ根拠のない報復襲撃を また始めるかと不安におびえ、 明らかに不必要に捏造された治安の危機にさらされる。 何の捜査もしないうちから、一体何を根拠にこんなにも簡単に パレスチナやオサマ・ビン・ラビンの名前を大々的に報道できる のだろうか。 そしてこの軽率な報道がアフガンの国内に生活をを営む 大多数のアフガンの普通市民、人道援助に来ている NGO(非政治組織)NPOや国連職員の生命を脅かしている ことを全く考慮していない。 1998年8月にケニヤとタンザニアの米国大使館爆破事件が あった時、私は奇しくも ケニヤのダダブの難民キャンプで 同じくフィールドオフィサーとして働いており、ブッシュネル 米国在ケニヤ大使が、爆破事件の2日前ダダブのキャンプを 訪問していたという奇遇であった。 その時も、物的確証も無いまま オサマ・ビン・ラデンの 事件関与の疑いが濃厚という理由だけでアメリカ (クリントン政権)はスーダンとアフガニスタンにミサイルを発射した。 スーダンの場合は、製薬会社、アフガンの場合は遊牧民や 通りがかりの人々など 大部分のミサイルが、もともとの ターゲットと離れた場所に落ち、罪の無い人々が生命を 落としたのは周知の事実である。 まして 標的であった軍部訓練所付近に落ちたミサイルも 肝心のオサマ・ビン・ラデンに関与するグループの被害は ほぼ皆無だった。 タリバンやこうした組織的グループのメンバーは 発達した情報網を携えているので、いち早く脱出しているからだ。 前回のミサイル報復でも 結局 犠牲者の多くは 子供や女性だったと言う。 我々国連職員の大部分は 今日緊急避難される筈だったが 天候上の理由として国連機がカンダハールに来なかった。 ところがテレビの報道では「国連職員はアフガニスタンから 避難した。」と既に報道している。 報道のたびに「アメリカはミサイルを既に発射したのではないか。」 という不安が募る。 アフガニスタンに住む全市民は 毎夜この爆撃の不安の中で 日々を過ごしていかなくてはいけないのだ。 更に、現ブッシュ大統領の父、前ブッシュ大統領は 1993年の6月に、同年4月にイラクが同大統領の 暗殺計画を企てた、というだけで、同国へのミサイル空爆を 行っている。 世界史上初めて、「計画」(実際には何の行動も 伴わなかった?)に対して実際に武力行使の報復 を行った 大統領である。 現ブッシュ大統領も今年(2001年)1月に就任後 ほぼ最初に行ったのが イラクへのミサイル攻撃だった。 これが単なる偶然でないことは 明確だ。 更にCNNやBBCは はじめからオサマ・ビン・ラデンの名を 引き合いに出しているが米国内でこれだけ高度に 飛行システムを操りテロリスト事件を起こせるというのは 大変な技術である。 なぜ アメリカ国内の勢力や、日本やヨーロッパの テロリストのグループ名は一切 あがらないのだろうか。 他の団体の策略政策だという可能性は無いのか? 国防長官は早々と 戦争宣言をした。 アメリカが短絡な行動に走らないことをただ祈るのみである。 それでも 逃げる場所があり 明日避難の見通しの立っている 我々外国人は良い。 今回の移動は 正式には 避難(Evacuation)と呼ばずに 暫定的勤務地変更(Temporary Relocation)と呼ばれている。 ところがアフガンの人々は一体どこに逃げられるというの だろうか? アメリカは隣国のパキスタンも名指しの上、イランにも矛先を 向けるかもしれない。 前回のミサイル攻撃の時は オサマ・ビン・ラデンが 明確なターゲットであったが 今回の報道はオサマ・ビン・ラデンを 擁護しているタリバンそのものも槍玉にあげている。 タリバンの本拠地カンダハールはもちろん、アフガニスタン全体が 標的になることはありえないのか? アフガニスタンの人々も タリバンに多少不満があっても 20年来の戦争に比べれば平和だと思って、積極的に タリバンを支持できないが 特に反対もしないという中間派が 多いのだ。 世界が喪に服している今、思いだしてほしい。 世界貿易センターやハイジャック機、ペンタゴンの中で 亡くなった人々の家族が心から死を悼み 無念の想いを やり場の無い怒りと共に抱いているように、アフガニスタンにも たくさんの一般市民が今回の事件に心を砕きながら住んでいる。 アフガンの人々にも嘆き悲しむ家族の人々がいる。 世界中で、ただテロの“疑惑”があるという理由だけで、 嫌疑があるというだけで、ミサイル攻撃を行っているのは アメリカだけだ。 世界はなぜ こんな横暴を黙認し続けるのか。 このままでは、テロリスト撲滅と言う正当化のもとに アメリカが全世界の“テロリスト”地域と称する国に攻撃を 開始することも可能ではないか。 この無差別攻撃や ミサイル攻撃後に 一体何が残るというのか。 又 新たな報復、そして 第2,第3のオサマ・ビン・ラデンが 続出するだけで何の解決にもならないのではないか。 オサマ・ビン・ラデンがテロリストだからと言って、 無垢な市民まで巻き込む無差別なミサイル攻撃を 国際社会は何故 過去に黙認しつづけていたのか。 これ以上 世界が 危険な方向に暴走しないように、 我々も もう少し 声を大にしたほうが良いのではないか。 アフガンから脱出できる我々国連職員はラッキーだ。 不運続きのアフガンの人々のことを考えると 心が本当に痛む。 どうかこれ以上災難が続かないように 今はただ祈っている。 そしてこうして募る不満をただ紙にぶつけている。 千田悦子 2001年9月13日 筆 ************. > > 「手記」はできるだけ広範囲の方々に読んでもらいたい、 ということですので、他の方に紹介してくださってけっこうです。 |
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